失敗は自分のせいである
『致知』2016年10月号で、上智大学名誉教授の渡部昇一氏が「幸田露伴が教える運を引き寄せる要訣」というテーマで寄稿していますが、その中で以下のようなことを述べています。
幸田露伴は人生における成功者と失敗者を観察し、一つの法則を発見します。
幸田露伴は言います。「大きな成功を遂げた人は、失敗を人のせいにするのではなく自分のせいにするという傾向が強い」
物事がうまくいかなかったり、失敗してしまった時、人のせいにすれば自分は楽です。
あいつがこうしなかったからうまくいかなかったのだ。あれがこうなっていなかったから失敗したのだ。
物事をこのうように捉えていれば、自分が傷つくことはありません。
悪いのは他であって自分ではないのだから、気楽なものです。
だが、こうした態度では、物事はそこで終わってしまって、そこから得たり学んだりするものは何もありません。
失敗や不運の因を自分に引き寄せて捉える人は辛い思いもするし、苦しみもします。
しかし、同時に、「あれはああではなく、こうすればよかった」という反省の思慮を持つことにもなります。
それが進歩であり前進であり向上というものです。
失敗や不運を自分に引き寄せて考えることを続けた人間と、他のせいにして済ますことを繰り返してきた人間とでは、かなりの確率で運の良さがだんだん違ってくる、ということです。
幸田露伴はこのことを、運命を引き寄せる二本の紐に例えて述べています。
一本はざらざらごつごつした針金のような紐で、それを引くと手のひらは切れ、指は傷つき、血が滲(にじ)みます。
それでも引き続けると、大きな運がやってきます。
だが、手触りが絹のような心地よい紐を引っ張っていると、引き寄せらるのは不運であるというわけです。
幸運不運は気まぐれや偶然のものではありません。
自分の在り方で引き寄せるものなのです。
「失敗をしたら必ず自分のせいにせよ」
幸田露伴の説くシンプルなこの一言は、人生を後悔しないための何よりの秘訣です。
幸田露伴のこの「失敗をしたら必ず自分のせいにせよ」という言葉も、要は永遠の真理である因果律(原因と結果の法則)を表しているものです。
すなわち、この世は因果律に支配されていて、現在の自分の環境は、過去の自分の思い・行動(原因)の結果であるということです。
失敗ももちろん自分のせいですし、成功も自分のせいです。
では、成功するためにはどうすればよいのか。
善きことを思い、善き行いをすることで成功が導かれ、善き環境が引き寄せられるのです。
善きこととは、良心・本心に基づく行いで、人のため、社会のためを思い行動することです。