奈良県吉野郡下市町、大鋒山を源泉とする丹生川の川上に丹生川上神社下社があります。

そこで宮司を務める皆見さんが赴任した当時、周辺は消滅集落が点在する山郷ということもあり、例祭には地元の人が10数人しか集まりませんでした。

そのような下社へ赴任するに際して、皆見さんは「ご利益を説かない」「宣伝をしない」「イベントをしない」「流行を追わない」ことを条件に、平成21年秋に宮司代務者として着任しました。

着任翌年の6月1日に行われた例祭には多くの人が参列し、地元の新聞には「全国からおよそ500人が参列」と発表されたことから、皆見さんの思いが神さまに通じたのだと感じ、これを機に正式に宮司に着任しました。

最近では、「宣伝もせずどうして人が集まるのか」と質問を受けることがあるそうです。

皆見さんは、次のように考えているそうです。

「人はいつしか論理的に物事を考え規則やルールを持った社会が正しく暮らしやすいと思うようになりました。

しかし、人には心があり、それぞれ異なる心情があるものです。

社頭の掃除の合間に、私は一人ひとりお参りに来られた方に声をかけ、日本人が培ってきた人の心を伝えてきました

おそらくその気持ちが参拝者の増加につながっているいるのではないでしょうか。

他を重んじ心豊かに生きるという、日本の八百万神(やおよろずがみ)の教えの根幹を、理解していただけているのではないかと思っております。」

丹生川上神社下社の社報の表紙には「発祥致福」と記されています。

これは、小さな幸せがやがて福を招くという意味です。

皆見さんは、この言葉の意味を深く受け止め、その水先案内人になる神社でありたいと述べています。

(参考:『致知』2017年5月号)

曹洞宗開祖の道元禅師の「切に願うことは必ず遂ぐるなり」、詩人の坂本真民さんの「念ずれば花開く」などの言葉と同じで、人が真剣に思ったこと、願ったことは、利己的なものでない限り必ず成就するという好事例だと思います。