靴下をはいたことがない少女

その少女は父子家庭で、児童相談所に保護された時、中学生のお兄さんがいました。

お父さんは土木の仕事に従事し、仕事が入ると1か月間家に帰らないなど育児放棄同然の状況でした。

したがって、その少女はお風呂にも入れず、毎日同じ運動服を着て素足に運動靴を履いて小学校に通っていました。

それで、周りの子からは「汚(きたな)い、臭(くさ)い」とバカにされます。

空腹は給食で満たしていました。

家に帰るとお兄さんの命令は絶対で、命令を聞かないとお兄さんは友達と一緒に殴ったり、蹴ったりして、鼻血を流す妹を見て大笑いする始末です。

小学5年の時に児童相談所に保護されますが、職員と心が打ちとけるにつれて、少しづついろいろな話をするようになりました。

ある時、職員が児童相談所に保護されて一番うれしかったことを聞いてみました。

職員は、お兄さんから暴力を振るわれなくなったとか、毎日お風呂に入れるとか、お腹いっぱいご飯が食べられるとか、そんな答えを予想していました。

ところが、予想外の答えがその少女から返ってきたのです。

「それね、靴下なんだよね」と。

その子は児童相談所に保護されるまで、生まれて一度も靴下をはいことがなかったのです。

相談所に保護された時、スタッフが傷だらけの足にクリームを塗って、その上に靴下をはかせてくれたんだそうです。

私たちが住むこの日本で、生まれてから一度も靴下をはいたことが無い子がいるのです。