『致知』2016年10月号「『心に響くちいさな5つの物語』に学ぶこと」の中で、次のような話が紹介されていました。

生まれたばかりの子供をすごく可愛がっていたお父さんが、ある時肺結核にかかってしまい、しかもそれが子供にうつって僅か1歳で亡くなってしまいます。

そのお父さんは次に生まれてきた子を1回も抱っこすることなく、その子が1歳になる前に亡くなりました。

そのお父さんの両親は台湾に行き、人助けのために餓死していますが、そうまでして人を助けたいと思う両親の心がそのお父さんにも伝わって、愛する子を抱かなかったのです。

お母さんは学校の先生でしたが、そこから雑貨商を始めて、母子二人だけで生きてきました。

子どもに対しては、「噓をつくな」、「人をだますな」、「人にけがをさせるな」、それ以外のことはおまえの思うようにやっていい。もし何かあったら、お母さんが祈ってあげる、お父さんと祈ってあげると、そういいながら守り育ててきました。

そのお母さんは、「もう頑張らなくていいのね」と繰り返しながら、94歳で亡くなりました。

亡くなる前にその息子は「お母さんとお父さんの子でよかった」と伝えます。

「俺を生かしたいと思って、1度も抱かなかったお父さんの愛と、俺のことを厳しく育ててくれたお母さんの愛。特にお母さんには人生で大事なことはすべて教わったので、それを自分はこの世で生かしていく」。

その息子は、自分の命をみんなの幸せのためにどう使ったらよいかということを常に考え、いまも一所懸命に農業をしているそうです。

表題は、米沢藩主の上杉鷹山の言葉で、次のように続きます。

父母の恩は、山よりも高く、海よりも深い。この恩徳に報いることは到底できないが、せめてその万分の一だけでもと、力の限り努めることを孝行という」