人間学を学ぶ月刊誌『致知』2016年12月号に、『松下幸之助「一日一話』の次のようなくだりが紹介されています。

「いまでも大切ではないかと思うことの一つは、自分は運が強いと自分に言い聞かせることである。本当は強いか弱いかわからない。しかし、自分自身を説得して、強いと信じさせるのである。」

松下さんが、人を採用をするときには「自分は運が良い」と思っている人を採用したという話は有名です。

しかし、どうでしょう。

普通の人にとって、自分は運が強いと自分自身に信じさせることは、「言うは易し行うは難し」ではないでしょうか。

自分自身を説得しようにも、「そんなことできるかな」、「そんなことできるわけがない」という思いに囚(とら)われてしまい、実行しないまま過ごしてしまうか、しばらくやってみて効果がないから「やっぱりそんなことできるわけがない」と止めてしまうのが関の山ではないでしょうか。

どのように自分自身を説得すれば良いのでしょう。

松下幸之助さんが新しい商売を始めるときによく相談をしていた中村天風は、積極的な人生を生きる上でのいくつかの方法を教えていますが、その一つに観念要素の更改ということを唱えています。

観念要素の更改とは、人間の潜在意識に働き掛けて潜在意識を改革する方法です。

中村天風は、次のように説明しています。

「筆を洗ったために黒く汚れた水の入ったコップを、水道の蛇口の下に置き、水道の水を1滴ずつポトポトと落としておくと、一晩の間にコップの中の水はきれいな水に替わっている。これと同様に、毎晩、観念要素の更改を行っていれば、潜在意識は積極化されるのである。」

観念要素を更改するタイミングは、夜眠る前の時間が良いです。

この時間は、理性を司る顕在意識、前述の「そんなことできるかな」、「そんなことできるわけがない」などといった普段起きているときに活発に働く理屈っぽい意識が薄れている状態になるので、無限の力を秘めている潜在意識に働き掛けやすくなるのです。

中村天風は、毎晩寝る前に、鏡に向かって自分に声に出して命令することで、潜在意識の改革をすることを勧めています。

これを自己暗示といいます。

ちなみに、中村天風は毎晩手鏡に向かって、「お前、信念が強くなる」と命令していたそうです。

松下幸之助さんが、鏡に向かって「お前、運が強くなる」と自己暗示をかけていたかどうかは分かりませんが、この方法を3か月ほど真剣に続ければ明らかにその効果が出てくるはずです。