京セラ名誉会長の稲盛和夫さんが『致知』という雑誌の5月号のインタビューで語られた言葉です。

人のため世のために尽くすことが、人間としての最高の行為である。

この宇宙には知恵の蔵、真理の蔵というものがあって、純粋な情熱を傾けて一心不乱に取り組むその真摯な努力に対して、神様は知恵の蔵の扉を開き、一筋の光明が差すように、困難や障害を克服するヒントを授けてくれるのではないかと思います。

いまの若い人たちの中に、自分が望んでいる道を選ぶことができなかった人がいたとしても、今ある目の前の仕事にわき目も振らず、全身全霊を傾けることによって、必ずや新しい世界が展開していくことを理解してほしいですね。

ですから、不平不満を漏らさず、いま自分がやらなければならない仕事に一所懸命打ち込んでいただきたい。

それが人生を輝かしいものにしていく唯一の方法と言っても過言ではありません。

心に描いたものは必ず具体化していく、心に描いたとおりの人生が出現していくと思っています。

卑しい心を持っていると、卑しい人生になる。

反対に、美しい心をもっていると、美しい人生になる。

だから、自分の心を蔑(ないがし)ろにしてはならない。

私はジェームズ・アレンの『「原因」と「結果」の法則』の言葉が好きで、よくそれを引用して講演などで紹介しているんです。

「人間の心は庭のようなものです。

もしあなたが庭に、美しい草花の種を蒔(ま)かなかったなら、そこにはやがて雑草の種が無数に舞い落ち、雑草のみが生い茂ることになります。

すぐれた園芸家は、庭を耕し、雑草を取り除き、美しい草花の種を蒔き、それを育(はぐく)みつづけます。

同様に、私たちも、もし素晴らしい人生を生きたいのなら、自分の心の庭を掘り起こし、そこから不純な思いを一掃し、そのあとに清らかな正しい思いを植えつけ、それを育み続けなくてはなりません」

よりよい人生を生きていくためには、心をきれいにして善きことを思い描くことが非常に重要だと思います。

働くということは、生きていく糧を得るためのものだというのが一般的ですけれども、そうではなくて自分の人間性を高めていくためになくてはならないものです。

一所懸命働くことによって、自分自身の心を高め、自分の人生を精神的に豊かなものにしていく。

同時に、収入も得られますから、物質的な生活も豊かになっていく。

ですから、働くということは大変大事なことだと思っています。

人は得てして、恵まれた環境にあっても、与えられた仕事をつまらないと感じ、不平不満を口にしがちです。

近年、若者の離職率が増加しているのもそういう理由なのでしょう。

しかし、それで運命が好転するはずがありません。

与えられた仕事を天職と思い、その仕事を好きになるよう努力していくうちに不平不満は消え、仕事も順調に進むようになっていく。

そして、物心共に豊かな素晴らしい人生を送ることができるのです。

私が京セラや第二電電をつくり、JALを再建し、素晴らしいことをやったと多くの人から賞賛していただきますが、ただ一つだけ自分を褒めるとすれば、どんな逆境であろうと不平不満を言わず、慢心せず、いま目の前に与えられた仕事、それが些細な仕事であっても、全身全霊を打ち込んで、真剣に一所懸命努力を続けたことです。

全生命を懸ける努力、世界中の誰にも負けない努力をしていけば、必ず時間と共に大発展を遂げていくものと信じて疑いません。

それともう一つは、人間は常に「自分が良くなりたい」という思いを本能として持っていますけれども、やはり利他の心、皆を幸せにしてあげたいということを強く自分に意識して、それを心の中に描いて生きていくことです。

いくら知性を駆使し、策を弄しても、自分だけよければいいという低次元の思いがベースにあるのなら、神様の助けはおろか、周囲の協力も得られず、様々な障害に遭遇し、挫折してしまうでしょう。

「他によかれかし」と願う邪心のない美しい思いにこそ、周囲はもとより神様も味方し、成功へ導かれるのです。