そのお父さんは、当時中学校の校長をしていました。

自分が負けず嫌いだったから、お嬢さんに対しても幼い時から「偉くなりなさい」と言って育てました。

お嬢さんが大きくなると、さらに「人よりも偉くなりなさい」と言って育てました。

小学校から高校まで、お嬢さんは順調に育ちました。

しかし、東京の大学に進むとそうはいかなくなってしまいます。

いくら努力しても自分より優れた人がたくさんいるのです。

お嬢さんは、絶望して、ついに電車に投身自殺をしていまいました。

「両親の期待に沿うことができなくなりました。

人生を逃避(とうひ)することは卑怯(ひきょう)ですが、いまの私にはこれよりほかに道はありません」

残された手紙にはそう書かれてあり、続けてこう書かれていました。

「お母さんほんとうにお世話様でした。

いま私はお母さんに一目会いたい。

会ってお母さんの胸に飛びつきたい。

お母さんさようなら」

これを読んだ母親は狂わんばかりに娘の名を呼び号泣しました。

そしてお父さんは、東京家庭教育研究所を創設しました。

お父さんは言います。

「子どもは這(は)えば立ちたくなり、立てば歩きたくなり、歩けば飛びたくなります。

これが子どもの自然な姿です。

子どもは無限の可能性を持って伸びようとしているのです。

それなのに私は愚かにも”人より偉くなれ”と言い続けてきました。

”自分の最善を尽くしなさい”だけで、娘は十分に伸びることができたはずです。

私は娘の死によって、家庭教育の重要性を痛感しました」

それ以後、その方は家庭教育の探求と普及に生涯を捧げたのです。

(参考;『致知』6月号)

親というものは、子どもに過度な期待を抱いてしまうことがありますが、親の期待は子供にとってはプレッシャーでしかありません。

子どもに対する期待は胸の中にしまっておき、子供の成長を黙って見守ってあげる方が良いのでしょう。

私も大学進学に際しては、親から一流大学以外への進学は認めないなどというプレッシャーをかけられましたが、ストレス以外の何ものでもありませんでした。

したがって、自分の子どもの進学に関しては、期待することはあってもなるべく口に出さないようにしています。