因果応報というものは、必ずしも現世ですべて完結するわけではありません。

例えば、前世で富を自分のためだけに乱用した人が、現世において自分の食べる物にも困るような貧しい生活を送らなければならなくなる場合があります。

前世で高慢だった人が、現世であらゆる屈辱に耐えなければならなくなる場合があります。

前世で権威を悪用して、部下を軽んじ冷酷に扱った人が、自分よりもっとひどい主人に仕えなければならなくなる場合があります。

現世での辛いこと、苦しみは、現世で犯した過誤の結果でなければ、それは前世で犯した誤りの償いです。

J・L・ホイットンというカナダのトロント大学医学部の精神科の教授が退行催眠という方法を用いて、被験者の前世を探った内容が「輪廻転生」という本に紹介されています。

ベン・ガロンジという被験者は、前世への退行催眠によって自分にひどい仕打ちをした者たちを殺すという非情な仕返しをしたことを知りました。

現世でベンは、子どものころから父親にいじめられて育ったため、大きくなってからも父親を憎み続け、18歳の時に父親を殺す一歩手前までいきました。

ある晩父親が酒に酔いつぶれてしまった時に、ベンは父親ののどを切ろうと台所の引き出しから包丁を取り出します。

そのとき心の中でささやく声が聞こえ、ベンは父親を殺すことを思いとどまりました。

ベンの退行催眠によって、ベンはこの世に生まれてくるときに、前世で何度も敵対関係にあったと思われる父親からひどい仕打ちを受けることを承知の上で、苦難に満ちた子供時代を選んだことがわかったのです。

また、1971年に夫を飛行機事故で亡くした三児の母親は、3,000年前の自分の行為に償いをしていることがわかりました。

その女性は、前世において中央アメリカのマヤ文明の信心深い指導者でした。

そして、彼女は自分に反対する者に死を宣告し、いけにえにすることを楽しみにしていたのです。

現生への誕生に際して、彼女はかつて自分が人に課した死別の悲しみという試練を受けることにより、同情心を養うことを計画していたことがわかったのです。

サイモン・エズラというユダヤ人の外科医は、前生ではローマの軍人としてユダヤ人の体を半分砂の中に埋めてその上を馬に乗って突進するというような残虐な行為を行っていました。

サイモンは医者になりたての頃、ユダヤ系という理由でトロントの大きな大学病院を追い出されてしまいました。

前世でユダヤ人を迫害したので、自分がユダヤ人として追放されるという体験をするのです。

このように、因果応報(原因と結果の法則)は、時を超えて完結することがあります。

かならずしも、現世で善くないことをしたら、現世でその報いを受けるというだけでなく、場合によっても時を超えて、次回地上に再生するときにその報いを受けるということもあるのです。

私たちから見て立派だと思えるような人が数々の試練に遭遇するような場合や本人には何の罪もない子供が親に虐待されるというような場合も、現世での因果応報ではなく、前世からの因果応報なのです。