北の達人コーポレーションの木下社長の悪戦苦闘の人生
健康食品・化粧品等を販売する「北の達人コーポレーション」の木下社長は、少年の頃から起業家を夢見て、高校生の頃にはビジネス書を読むようになり、大学に進むと学生たちだけで運営する「学生企業」に参加しました。
大学卒業後はリクルートに就職し、様々な業種の企業を相手に採用や教育などの支援を行い、独立のための準備を行いました。
そして、5年後に日用品販売業をスタートし念願の企業を果たしたのです。
ところが、最初こそ順調だった業績は2年目を過ぎたあたりから徐々に低迷し、売り上げを上げようともがけばもがくほど、なお落ち込むという状況になってしまいます。
とうとう手持ち金が50円になり、事業継続を断念せざるを得ませんでした。
目先の利益を追うばかりに、お客様の満足という商いの原点を忘れてしまっていたのです。
木下さんは起業家としての夢は諦めませんでした。
結果的に失敗だったとはいえ、自ら事業を運営する喜びと充実感は、サラ―リーマン時代と比較にならないほど大きかったからです。
「成功するまでやり続ければ必ず成功する。成功しないとすれば、成功までの途中で死んでしまう場合のみだ」と、肉体労働で糊口(ここう)を凌(しの)ぎました。
木下さんは学生企業にいた経験から無資金でビジネスを始める方法を模索し、ちょうど普及し始めたばかりのインターネットを使って北海道の特産品を販売するビジネスを始めました。
木下さんは自宅アパートで自前の通販用のホームページを作成するとともに、北海道の物産会社に片っ端から電話をし商品を仕入れさせてもらえるように交渉しました。
全く実績のない新参の若者が相手にしてもらえるはずもありませんでしたが、100件、200件と電話をかけ続けるうちに応援してくれる人が現れ、ハム、ソーセージ、カニなどの特産品を扱えるうようになりました。
事業を立ち上げてほどなく木下さんはパソコン一つを手に北海道へ移住しましたが、月に10万円を売り上げるのがやっとで、アルバイト生活は相変わらずでした。
転機となったのは、ネット通販を徹底的に研究して始めたメールマガジンの発行と懸賞サイトの活用です。
メールマガジンの登録者はピーク時に20万人を数えるまでになり、売り上げも右肩上がりに伸び続けました。
その実績が認められ、日本オンラインショッピング大賞を受賞。
ネット通販事業で知らない人はいないと言われるほど、会社の知名度が上がりました。
しかし、それも長くは続きませんでした。
インターネットの爆発的普及により、北海道の特産品を取り扱う競合相手はたちまち500社以上に増え、木下さんは大きな転換を求められました。
新規事業として着手したのが、「わけありグルメ通販サイト」です。
これもマスコミで大きな注目を集めたものの、一方で再び類似ビジネスが乱してきます。
木下さんは必死に築き上げたノウハウを二度も立て続けに奪われるというピンチに立たされます。
真似をされる程度のサービスでなく、自分たちにしかできない本物の商品をお客様に提供しなくてはいけないと熟慮した結果、木下さんはその頃売り上げを伸ばし始めていた北海道産のオリゴ糖に望みを託すことにしました。
腸内環境にやさしいオリゴ糖商品は女性を中心に人気を博し、いまや北の達人コーポレーションの業績を大きくけん引するようになりました。
そして、2015年に東証1部上場を果たしたのです。
パソコン1台だけを持って何の人脈もない北海道に渡り、起業家としての夢を手に入れたのです。
木下さんは、これまでの人生を振り返って、最後まであきらめなければ必ず物事は成功すると述べています。
(参照:『致知』2017年7月号より)
松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助さんも、「成功とは成功するまでやり続けること」と木下さんと同じことを言われています。
ということは真理なのです。