広島県福山市に非行や不登校、高校中退、偏差値30台といった生徒たちを国公立大学や難関私立大学に合格させて、奇跡の塾と呼ばれている「フジゼミ」があります。

そこの塾長の藤岡克義さんへのインタビュー記事が『致知』という雑誌に掲載されていて、参考になることが多いので紹介します。

私は小学校の頃はいたって普通の子どもでしたが、『ビー・パップ・ハイスクール』という不良少年を描いたドラマを見て、憧れをいだくようになりました。

中学に入ると、家に帰らなかったり、煙草を吸ったり、警察の厄介になる日々。

で、2年生の時、同級生とケンカして相手を骨折させてしまい、退学処分となり、高校時代も同じ過ちを犯し、入学1か月で退学処分を食らったんです。

父親から「家に戻ってくるな」と言われ、東京の酒問屋で肉体労働を半年間した後、友達に会いたくなって地元の広島に戻り、翌年別の高校に入学しました。

入学直前、友達と盗難した車を無免許運転した揚げ句、事故を起こし、私の右目にフロントガラスが突き刺さって、視力を失ってしまったんです。

結局、その高校も退学し、遊びとバイトを繰り返していました。

17歳でゲーム喫茶の店長となってからは、賭博や高利貸しをして毎月100万円以上稼ぎ、高級車を乗り回していたんです。

だけど、警察に捕まったりブームが去れば、この仕事ができなくなることはわかっていました。

私は中卒、就ける仕事は限られているわけです。

他にいまの稼ぎが維持できる仕事といったら、水商売か風俗かやくざくらい。

でも、そんな仕事には何も魅力を感じない。

悶々としていた時に、大検(現・高卒認定試験)という制度を知りました。

19歳の時でした。

高校を2回やめた時点で、私の中に進学という選択肢はなくなったんですけど、大検に合格したら自分でも大学に進学できるし、就職の応募先も高卒以上のところに広がる。

これには感動しました。

大学を出た人たちは、当時の私でも知っているような大企業に勤めている。

そういうところに行ったらすごい人生になるんじゃないかと思い、20歳になる年の3月から大学進学を目指して勉強を始めたんです。

毎日10時間、みっちり勉強し、その年の大検に合格しました。

大学受験も当初2年の予定のところ、1年で合格を果たし、國學院大學に入学したんです。

勉強したノートやファイルを積み上げると、その高さはなんと1メートルを超えていました。

 

大学卒業後は、大手総合建設会社の大林組に入社しました。

中退を繰り返している無茶苦茶な経歴でも、評価してもらえる企業ってたくさんあるんですね。

任される仕事もどんどん増え、仕事が楽しくて仕方ありませんでした。

で、入社2年目の夏、地元の祭りに参加するために帰省した時、飲み会で友達が「おまえはすごい」「俺らの誇りじゃ」とほめてくれたんですけど、私にはそれが全然うれしくなかったんですよ。

というのも、友達の多くが定職についていない。

ニートや覚せい剤中毒になっているやつもいる。

とてもショックでした。

その時に思ったんです。

自分はたまたま運がよかっただけ。

人生の節目、節目で導いてくれる人と出逢いがあり、結果として大学に行き、ゼネコンに就職もできた。

じゃあ、これから先、自分一人でその恩恵を享受していいのか。

自分がやった勉強の方法を若い子たちに教えてあげたり、自分が経験した大学生活を多くの人に伝えていく。

それが自分の使命じゃなかろうかって。

紆余曲折を経て、1年半後に会社を辞め、学習塾フジゼミを立ち上げました。

2004年4月、28歳の時でした。

そんな私が仕事をしていて一番心配しているのは、実は普通の子たちなんですよ。

大過なく、道を逸れることもなく、「親や先生が言ったから」「周りが皆そうしているから」という理由で、高校、大学と進学し、就職活動をしている子。

自分の意志がないままに、とりあえず敷かれたレールに乗っていると、ある日突然、「さあここからはどうぞご自由に」と言われた時に、何をやっていいいかわからなくなり、路頭に迷ってしまう。

だから、苦労や遠回りをするのも時には必要ですし、そのほうが人生の夢や目標が見つかると思うんです。

私はドロップアウトした子たちにいつも、「いままでのブレ幅が大きければ大きいほど、それは武器になる」と言っていますが、これは私自身の実感です。

私もこれまで散々つまずいたり寄り道したりしてきましたけど、その経験がなかったらフジゼミは生まれていないと思いますし、すべてが自分にとって貴重な財産になっていると断言できます。

周りの人に遅れることなく進んでいかなきゃいけない、遅れたり道を踏み外そうものなら必死で止めようとする。

そういう世の中に対して、「つまずき、寄り道、回り道は財産になる」ということを、これからも伝え続けていきたいと思います。

(引用:『致知』2017年3月号インタビュー記事より)

谷が深ければこそ頂上は高くなるのです。

同じように、人生も大きな逆境を乗り越えれば、そのあとに大きな幸せが待っているのです。

そして、人は逆境の中でこそ磨かれ、成長できるのです。

このことを、藤岡さんの生きざまを見て改めて噛みしめました。