ある生命保険の外交員に学ぶ
Aさんは生命保険会社の外交員としてスタートしました。
外交員という仕事は、体力と神経の両方をすりへらしながら、どこというあてもなく歩き回り、あげくのはてに1本の契約も取れないことも多い仕事です。
Aさんも、御多分に漏れず、1日中歩き回り、脈のありそうな家に何回も足を運び、これはと思ったところには、真夜中に訪ねたこともあります。
数か月経った頃には、Aさんはすっかり体力と神経を消耗してしまいました。
そして、ある日幻滅(げんめつ)と悲哀(ひあい)に耐えきれなくなり、セールスの仕事をやめようと決心しました。
その時に、ふと思ったのです。
仲間には、面白いほど契約を取り、高級車を乗り回し、立派な家を構え、快適な生活を送っている人がいる。
自分のセールスの仕方には、どこか間違いがあるのかもしれない。
そう思った彼は、机に向かい過去の成功した時の状況をノートにまとめてみました。
そして、それを分析して自分自身の成功パターンを引き出し、それを他の見込み客にあてはめていけばよいのだと、Aさんは考えました。
そうやって分析した結果、Aさんが引き出した成功パターンは、お客さんと契約に至った時は、最初に訪ねた時か2回目だということでした。
つまり、3回目以降は何度訪ねても無駄だということでした。
Aさんは努力家であり、根気強い性格です。
それが何度でも訪ねてみるしぶとさの原動力でしたが、セールスに関する限り、二度訪ねてダメなお客さんは、そのあと何度訪ねても無駄だということが分かったのです。
幻滅と挫折感が強いのは、同じ人を今度こそはとしつこく訪ねすぎるところから来ていることもわかりました。
多い時には6回も訪問し、しかも断られました。
こう分析して、彼は一抹(いちまつ)の光明を見る思いがしました。
「これからは二度で勝負しよう。二度訪ねてダメだったら、リストから抹消していこう!」
彼はそう決心しました。
Aさんの考えは見事に当たりました。
1軒を二度以上訪問しないということは、新しく訪問する家が増えることを意味します。
また二度しか訪問しないという決心は二度までに何とか契約してもらおうという意気込みを生むことになります。
彼はその意気込みでどんどん回りました。
やがて、成績がウナギ上りに上昇していったのです。
そして、いつのまにかトップセールスになり、その生命保険会社の社長にまで上り詰めました。
この実話には、生きた教訓があります。
仕事がうまくいかない時は、なぜうまくいかないのかを分析検討するということです。
どこかに間違いがあるからこそ、うまくいかないのですから、それをいち早く発見して是正していくことが大切です。
言い訳をしている暇はありません。
愚痴(ぐち)をこぼしている暇もありません。
実行あるのみです。
うまくいかない人によくあることですが、自分のやり方のどこが悪いかを知りながら、それに対処するための手段を講じない人がいます。
これでは事態は改善しません。
分析をして、自分のやり方には無駄が多いことを知ります。
しかし、正直に欠点を認めたまでは良いのですが、それに続く行動がありません。
おまけに「どうしたらいいのかわからない」などと愚痴をこぼします。
わからないのではありません。
積極的行動に出る気持ちがないのです。
とにかく思いついたことを、積極的に行動に移すことです。
それが功を奏すかどうかに、こだわってはいけません。
今すぐ立ち上がって、何かを始めることです。
行動こそが、すべてです。
自分を取り囲む情勢がいかに暗雲低迷していても、気持ちだけは常に積極性を失ってはいけません。
弱気になってはいけません。