人間万事塞翁が馬

人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)ということわざは、福が禍(わざわい)をもたらし、また禍(わざわい)が福をもたらすというように、禍福というのは予測できないということを教えています。

『致知』2016年9月号の「創業の原点」というコーナーに、博多華味鳥というブランドで有名な会社の創業者の話がこのことわざを題名に紹介されています。

同社の創業者は、幼いころから貧乏に苦しみ、8歳の時に家計を助けるため毎朝6時に起床して行商をはじめたものの、2年後に弟が栄養失調で他界。

戦争時には満州での激戦を経てソ連軍の捕虜として重労働を強いられ、黄疸や発疹チフスを患い、何度も生死の境を彷徨います。しかし、そのたびに「家族のもとに帰るまで絶対に死なない」と心を奮い立たせ、九死に一生を得て、無事帰国を果たしたのです。

その後、父や兄弟とともに博多の吉塚市場の一角で、仕入れた鶏肉をさばいて対面販売し、家族と数名の従業員を養うのに十分な利益を上げていました。

ところが、順調な生活は長くは続きませんでした。ある時、強制立ち退きによって商店街のはずれに移転を余儀なくされ、途端に客足が遠のいてしまいます。

それなら自分たちで売りに行こう。そう思い立ち、以前から買いに来てくださった食堂や料理屋を回って注文を取り、自らリヤカーを押して配達する鶏肉卸の専門店として創業したのです。1949年、24歳の時でした。

代金は後で受け取ることを前提に商品を提供する売掛という概念は当時まだなかったことから、同業他社からはひどく嘲笑されましたが、誠実な姿勢が次第にお客様の信頼を得て、事業を拡大していきました。

不撓不屈の精神力で幾度も苦労や試練、絶体絶命の危機を乗り越えてきたことにより、運をも味方につけ、禍いを福に転じることができたのでしょう。

(引用;『致知』2016年9月号「創業の原点」より)