あるお母さんがいました。

彼女のお子さんは、オリンピックで金メダルを取る可能性もあった優秀な運動選手でした。

幼いころから才能を発揮して、学業も優秀で性格も素直な、非の打ち所のない子供でした。

お母さんは、「あなたは特別な才能に恵まれているのだから、その分多くを社会にお返ししなければなりません。スポーツも勉強も一所懸命にやって、オリンピックで金メダルを取れるように頑張りなさい」と言い聞かせていました。

誰もがその子の活躍を信じて疑いませんでしたが、その子は、16歳の時にオリンピックの代表選考会前日にビルの屋上から飛び降りて自らの命を絶ってしまいました。

そのお母さんは3年くらい涙に明け暮れる生活を送っていましたが、あるきっかけで身の回りに起こることはすべて意味があることを学び、自分の子供の死にはどういう意味があるのかを考えました。

そして、自分の小さな殻を破り、人様のために何かできることはないだろうかと思いを巡らせ、ささやかな実践を重ねるようになったそうです。

そのお母さんはこんなふうに語っているそうです。

「もしわが子が生きていれば、わが子が金メダルを取ってテレビでもてはやされていたかもしれません。けれども、それとは比較にならないほど深い喜びと静謐(せいひつ)を、わが子は与えてくれました。」

こんな言葉があります。

辛い境遇にある人に優しくできるのは、同じ大きさの辛さを味わったことのある人だ